2024.06.08
こんにちは!街の屋根やさん宝塚店、生クリームが好きな京谷です(*^^*)今日のブログは、芦屋市にお住まいの方から「玄関屋根の棟瓦が一部崩れているので補修の見積もりをしてほしい」というご相談を頂いたので、無料診断へお伺いした時の様子を書いていきますね!!和風建築のお家ですと玄関屋根…
台風が上陸して暴風圏内に包まれてしまうと何かしらの被害報告が寄せられますが、宝塚市のこのお宅でも瓦と波板に被害が出ました。
大屋根および下屋ともに切妻形状の屋根は、施釉和型瓦で葺き上げられていますが、下屋の棟瓦(冠瓦)が剥落たようです。
風圧で剥落した棟瓦(冠瓦)は、大きく舞い上がって地瓦の上に落下したと思われ、直撃を受けた地瓦2枚が割損していました。
台風が過ぎ去った後、被害を受けた事を自覚された施主様は、周囲に飛び散ったと思われる波板の残骸を捜索しましたが見つからなかったとの事。
被害状況から考えれば、部分被害に留まった瓦屋根よりもベランダ屋根の方が酷く、修理の優先順位はベランダ屋根だと考える事もできます。
しかしベランダは、屋根以外の開放空間からも雨水が吹き込む構造にあるので、波板屋根がない状態でも、家の内部が雨漏りする事はありません。
ベランダデッキが雨ざらしになる程度で、空模様を確認しながら干す洗濯物を取り入れるようにすれば済み、懸念は強くないでしょう。
(雨漏りを回避する観点での優先順位の決め方であり、利便性の観点では見解が変わるものである事を付言します。)
(ベランダの波板屋根については、別のブログで言及し、被害を受けた原因と復旧、火災保険の活用方法までお示しします。)
棟瓦(冠瓦)の欠損と、地瓦の割損状態は、家の内部に雨水が浸み込んで、天井や壁紙に雨染みを生じさせ、家を傷め始めるからです。
棟瓦(冠瓦)の欠損と地瓦の割損がどうして雨漏り症状の発現に繋がるかを、瓦屋根の構造から、そのメカニズムを考えます。
まずは棟瓦(冠瓦)が舞い飛んだ弾みで割損した地瓦の状態を見ましょう。割損した箇所には小さな隙間が生じている事が解ります。
瓦は1枚1枚縦横において、数センチずつ被り込むように貼り重ねられることで、継ぎ目から雨水が侵入しない設計にあります。
割損した箇所を見ると、左側の瓦が先に葺かれた後に、右側の瓦が貼り重ねることで雨水の侵入を防ぎますが、口を開けています。
この被害箇所は下屋の中腹部分に出来ていますが、分水嶺である棟から流れ落ちる雨水の多くが、ここから浸み込む可能性が憂慮されます。
次に棟瓦(冠瓦)の被害状況に目を向けますが、屋根構造から、雨漏りと瓦屋根の被害最小化の観点で、こちらが最優先です。
それは屋根で一番高い位置にある棟を構成する瓦が欠損すると、そこから浸み込んだ雨水が、瓦屋根全体に影響を及ぼすからです。
下屋の中腹部分に生じた地瓦の割損被害も、雨漏りが始まる可能性がある点で軽視できませんが、棟瓦(冠瓦)の方が重要です。
重要度が高い理由は、その位置にあります。地瓦の被害は屋根の中腹ですが、棟瓦(冠瓦)は屋根の頂上で浸水の影響度が大きくなるからです。
雨水の侵入と言う点では、どちらも屋根の基材である野地板や垂木から、部屋の天井材や壁紙まで雨染みが生じて剥がれる心配があります。
スレート屋根(カラーベストやコロニアルとも呼ばれる屋根材)やガルバリウム鋼板屋根の場合は、被害部分を修理してしまえば、屋根全体への影響は大きく出る事はありません。
(雨漏りで野地板や垂木、桁や間柱、通し柱などの木製の躯体が一度濡れてしまうと「もう家は住めないのでは」と思う方はご安心を。早期に雨漏りを止めてしまえば、家の強度が大きく下がる事はなく、安心して十分に住むことができます)
しかし土葺きの瓦屋根の場合、浸水が長く続くと、「瓦の葺き直し」や「瓦の葺き替え」が必要になる事があるから優先されるのです。
土葺きの瓦屋根に「短期間で多く」または「微量だが長期間にわたって」雨水が浸み込むと、なぜ大掛かりな屋根工事に発展するかを考えます。
土葺きの瓦屋根は、野地板の上に防水シートを敷き込み、雨水を受け流す瓦を安定的に据える土台として、葺き土を盛ります。
葺き土は一定の水分量を保った状態で、瓦の位置を安定的に保つので、それが多すぎても少なすぎても、不安定になります。
雨水の侵入で水分量が多くなった葺き土は、瓦を所定の位置で安定的に保つ力を失い、貼り重ねた瓦同士に大きな隙間が生じるから、「瓦の葺き直し」や「瓦の葺き替え」工事につながるのです。
実際に棟瓦(冠瓦)が欠損した被害状態を見ましょう。直下の熨斗瓦の上に盛られた葺き土は、多量の雨に晒されました。
棟瓦(冠瓦)が欠損した部位で、直下の熨斗瓦の上に残存している葺き土から受ける印象は、土と言うより「砂」に近いものです。
土はその粘り気から捏ねると一団として固まりますが、砂は故事成語で知られる「砂上の楼閣」に過ぎない状態になります。
野地板と瓦を強固につなぎとめる葺き土が多量の水分に晒されると、所期に求められた瓦屋根の強度を著しく失う事になるからです。
浸水量が過剰な場合、葺き土が流れ始めるので、瓦の位置が安定しないばかりか、室内への雨漏りも深刻な症状として現れます。
小屋裏(屋根裏)に多少の雨漏りが生じても、それが短期間で、回数が少なければ、深刻に受け止める必要はありません。
葺き土は傾斜がある屋根を流れ落ちると、軒先から流出し始め、軒先に設置された雨どいが受け止めますが、やがて限界を迎えます。
雨樋は屋根の上に降り注ぐ雨水を軒先で受け止め、それは集水器から竪樋に達して、連続的に排水する屋根機構の一部です。
バケツをブチ開けるほどの大雨でも、雨どいから水が溢れかえる状態には滅多になるものではなく、最大を想定した設置強度になっています。
ところが、葺き土が流れ込むと、乾いている土でもその重量は設計重量を超え、雨水を含むと、雨どいを破損しかねない目方になります。
経験値として積雪が多い時も想定した雨どいも、単位質量が大きい葺き土が流れ込み、覆い尽くすレベルまでは耐える事が出来ません。
棟は屋根の一番高い位置にあり、頂上で瓦(屋根材)が突合しますが、寸分の狂いもなく追い当たる訳ではなく、僅かな隙間が残ります。
仮に寸分の狂いもなく追い当たったとしても、瓦(屋根材)が地震や風の圧力で動く事が考えられので、棟瓦(冠瓦)で仕上げられます。
スレート屋根(カラーベストやコロニアルとも称します)やガルバリウム鋼板屋根でも同じことで、棟包み板金が役目を果たします。
実際に瓦屋根の棟瓦(冠瓦)を取り除いた状態を見てみましょう。かまぼこ板のような形状の熨斗瓦が突合している状態です。
熨斗瓦と熨斗瓦の突き合せ部分に隙間が存在している事が解ります。棟瓦(冠瓦)がなければ、雨を止める事が出来ないのです。
瓦屋根でもスレート屋根(カラーベストやコロニアル)、ガルバリウム鋼板屋根を問わず、棟瓦や棟包み板金の欠損は解消しなければなりません。
しかしその状態が直ちに部屋の中で雨漏りが発生するのかと言う視点では、それぞれの屋根事情に因って一概に憂う物でもありません。
その理由は、仮に屋根材に異常を来したとしても、直ちに雨漏りする事がないよう、野地板の上にルーフィングシートがあるからです。
ルーフィングシートとは防水シートの事で、極端に申し上げると、屋根材で仕上がっていない状態でも、雨漏りする事がないのです。
ルーフィングシートは屋根仕上げ材の次に雨漏りを回避する屋根材ですが、陶器製の瓦ほど耐用年数を期待する事は出来ない素材です。
今厳密な理由の言及は避けますが、経験上、30年を超えるとルーフィンングシートの防水能力は低下すると感じています。
築年数が浅ければ守られますが、40年前後経過している屋根の場合、屋根材が突合する棟の隙間から浸み込んだ雨水は、雨漏り症状として発現する可能性が高くなります。
瓦屋根工事をした後(瓦屋根を葺いた後)には、必ず何枚もの瓦が余りますので、部分修理用に敷地のどこかに保管されています。
(陶器製の瓦は、窯で焼くと熱による1枚1枚伸縮率が異なるので、工業製品のように狂いなく同じものを作る事ができません。
三角形や台形の屋根面が複合的に形成される寄棟屋根であれば、瓦を斜線切断しますので、切削ロスを含みおいて多めに用意します。
地震や台風が運ぶ飛来物による割損被害も想定しているので、瓦屋根工事では10枚から20枚程度の、予備瓦が残されるのです。)
このお宅でもお庭の片隅に、瓦屋根工事で余った瓦が残されていました。その数量は限られていますが、無いよりも遥かにましです。
予備品は、当時の色目および形状が近似しているので、部分補修をした後に、見た目の違和感がなく収まり、その場で終わる事もあるのです。
割れてしまっている2枚の地瓦は、敷地に残されていた予備品を差し替える事で、雨漏りする心配から解放されました。
しかし舞い飛ばされて欠損している棟瓦(冠瓦)の復旧には7枚必要ですが、1枚も残されていないので、完了する事は出来ません。
地瓦の規格は53瓦や56瓦が主流で、棟瓦(冠瓦)も5寸瓦、7寸瓦と、おおよそ決まっていますが、念のため採寸します。
焼き物(陶器や陶磁器)は、陶工が同じ土、同じ釉薬を使用しても、二度と同じ色を出す事ができない事情をご想像頂けるでしょう。
瓦屋根を仕上げた当時から予備品として残されていた地瓦でも、40年を超える自然環境で保管される中で、褪色して色目が完全に合いません。
このように考えると、色褪せが全くない新品の棟瓦(冠瓦)が、既存の瓦と多少色目が異なる事は、どうしても起こる事なので、許容範囲と考えるしかありません。
(色目の違いが生じるものの、それが十分に許容範囲である事は、いずれアップする施工事例を見て頂くとご納得いただけます。)
焼き物の一種である棟瓦(冠瓦)の予備品がなければ、部分補修工事もする事ができず、一方雨漏りを甘受する事もできません。
40年以上経過していますが、規格は大きく変わっておらず棟瓦(冠瓦)の供給は続いているので、仕入れを待つ事になります。
仕入れた瓦で復旧する期間の天候による影響を受けず雨漏りを回避するために、ブルーシートで棟からの浸水を防ぎます。
棟に架けたブルーシートが風でたなびき、吹き飛ばされる事がないよう、ペットボトルに水を充填した重しが守ってくれます。
水下から順に貼り重ねられる瓦(屋根材)と同じように、最頂部の棟にブルーシートを覆い包む事で、雨漏りは回避できます。
街の屋根やさん宝塚店が応急処置に使用するブルーシートは、グレードの高い物を使いますので、最低でも半年は雨漏りする事がありません。
今回の風災でクローズアップした棟瓦(冠瓦)の被害が、風圧を受けにくい下屋でなぜ起こったのか、次のブログでメカニズムをご覧いただきましょう。
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