カラーベストの葺き替え工事をよく見ていると隙間があります。
屋根材の張り継ぎ目に隙間があると、雨漏りするのではないかと心配します。
その隙間は意図して設計されており、隙間がなければ屋根の水分滞留時間が長くなります。
カラーベストを葺き進める工事の様子を観察すると、互い違いに張っていく「千鳥張り」になっていることに気が付きます。
水下のカラーベストの中央に水上のカラーベストの張り継ぎ目が位置するように張ってありますが、その張り継ぎ目に隙間があります。
定寸のカラーベストの上半分は隙間なく張り継がれていますが、下半分は隙間が空いた状態なので、雑な工事ではないことは解ります。
おそらくこれで正常に張られていると思われますが、なぜ下半分の張り継ぎ目だけ隙間が空く設計になっているのでしょうか。
少しわき道にそれるようですが、瓦屋根の棟にはかまぼこ板状の熨斗瓦が積まれ、紐丸(冠瓦)が被されています。
写真の棟は一般的な熨斗瓦3段積みですが、何段積であっても同じ理屈で、必ず互い違いに積まれています。
ここで熨斗瓦が互い違いに積まれる理由を考えます。空から雨水が降り注ぐと、半丸形状の冠瓦の両側に流れ、最初の熨斗瓦に達します。
冠瓦と熨斗瓦は接していますので、その接点で水分は一部に偏って大量に存在することはありません。均一になるよう横方向へ移動します。
水は水平部分であっても、表面張力が働かない限り、均一に存在しようとするので、横方向へ移動します。
雨水が移動する横方向の限界点はどこでしょうか。「棟の両端部」ではなく、熨斗瓦の継ぎ目です。
熨斗瓦は継ぎ目できちんと追い当てられていますが、そこには微妙ながら隙間が生じます。この隙間が重要な役割を果たしています。
この隙間に到達した雨水は、そこで横方向の移動をやめ、表面張力を伴いながら隙間の表面を沿って下流れします。
その水分は次の段の熨斗瓦に到達すると、張り継ぎ目がない平面では、左右の横方向に移動して均一状態を保とうとします。
あとは同じ動きを繰り返して、最後の3段目の熨斗瓦に到達します。その水分は熨斗瓦の先端から、棟に飲み込まれた追い当て瓦の上に注がれます。
余談ですが注意点は、2段目の熨斗瓦の先端位置よりも、面戸漆喰の表面は数センチ内部に位置することが必要です。
もしこれが同位相または逆位相状態にあると、面戸漆喰と葺き土に雨水が浸み込むことになりますので、早晩棟には雨水が回ります。
カラーベストの千鳥張りと、働き部分(張り重ねられず表面に露出する部分)に設計上生じる隙間は、熨斗瓦の千鳥積みと同じ理屈が働きます。
カラーベストの先端から滴る雨水は、その先端を横方向へ移動し、次の段のカラーベストの張り継ぎ目で横方向の移動が止まって、水が切れて行きます。
さらに次の段に達した雨水は継ぎ目のない平面部へ流れ落ち、横方向の移動を始めます。
そして張り継ぎ目に達した水分は、そこで横移動を終えて、さらに下の段へ流れて行きます。
つまるところ、1000年以上の歴史がある瓦屋根で、棟に積まれる熨斗瓦、壁際の追い当て部分で積まれる土井熨斗の水切り論理を受け継いで設計されているのです。
よく観察するとカラーベストの先端は直線ではありません。デザイン性も兼ねていると思いますが、重要な役割を果たしています。
単調な一直線ではないこの形状、何箇所か先端部分ができています。先端の突起部分が水を切る位置になり、両端までの水分の横移動を止めて流します。
千鳥に張られた張り継ぎ目の1段上は、定寸のカラーベストの中央部分が位置します。鼻先のような形状をしていますが、これも同じ働きをして水切れが良くなっています。
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