屋根の表面には、大気中に浮遊する微粒子のホコリなどが自然に降り積もったり、雨水とともに降りかかったりして、想像よりも多くのホコリで汚れてしまっています。汚れは汚れを呼んでしまうもので、汚れた表面にはホコリが滞留しやすくなり、そこにはコケや藻類を発生させ、種子が発芽して草が生えることもあります。
とりわけ無視できないのはカビの類です。外気に触れているのだから生えるわけはないと侮るなかれ。取り除くことなくカバー工法で覆ってしまうと、屋根の内部にカビを閉じ込めてしまい、たくましいカビは一定の条件がそろうと増殖を続け、健全な状態の建物まで触手を伸ばして、住んでいる人々に知らぬうちに健康被害を及ぼしてしまうのです。
それゆえカバー工法工事の前には「高圧洗浄作業」が有効です。軒先の唐草板金と雨樋が複雑に構成されている箇所や、谷部分、棟板金と屋根材の境目、屋根材と屋根材の継ぎ目などに汚れが滞留していることが多く、そこを重点的に洗浄していきます。
業務用の高圧洗浄機は相当なパワーがありますので、やみくもに洗浄作業をすると、比較的柔らかい素材でできている雨樋はいとも簡単に破損させてしまいます。破風板や鼻隠し板などは塗膜を剥がしてしまうだけでなく、木製や石灰成分の本体を痛めてしまうことになります。
そして汚れの目立つ屋根材と屋根材の継ぎ目などを過剰に洗浄してしまうと、その隙間から水圧で水分が侵入し、ルーフィング材が水浸しになるばかりでなく、劣化していた場合は下地材(野地板)までも水浸しにしてしまいます。奥深く侵入した水分が抜けるには長い時間を要しますので、小屋組みの構造木材を劣化させた上に、カビの元凶を重ね葺き工法で閉じ込めてしまいますので、本末転倒になってしまいます。
簡単な作業のようですが、経験豊富で熟達した技に裏打ちされた作業が求められ、屋根各部に適した洗浄作業が、そこに住んでいる人々の健康を守っているのです。
表面に付着した汚れの色こそ完璧には除却できませんが、職人さんが素手で拭っても、その手が汚れないまでに清潔になりました。これでカバー工法工事入っても安心です。